「勝ち取った権利」と「与えられた権利」
今の世の中には「権利」がありふれています。
基本的人権、生存権、知る権利、対価を受け取る権利...などなど。
ですが、結局のところ権利を享受する側が自らの努力によって「勝ち取った権利」こそ真の権利になるのであって、他人から「与えられた権利」は前提の一つという程度の認識しか持てないんですよね。
会社の福利厚生は「権利」? それとも「前提」?
例えば「会社の福利厚生」は確かに労働者の持つ権利です。
でも「こんな環境を提供して頂けるとは、なんとありがたい!」と思うのか「9時間労働するんだからこれくらいは当然でしょ」と思うのかみたいなのは、やはりこの「勝ち取った」か「与えられた」かの認識の差で分かれるんだろうなと。
- 会社を興した側は「無給無休で働き続け努力の末に会社が安定しようやく手に入れたもので、今まで無かったのものを頑張って勝ち取ったんだ!!!」という認識
- 一方後から入る社員にとっては「企業としてこれくらいあって当然、むしろ福利厚生が無いのは業界標準以下」みたいな認識
ということですね。
勝ち取った権利は「ない」がデフォルト、与えられた権利は「ある」がデフォルト
もともと存在しない権利を闘争によって勝ち取ったら、その人は大抵「権利がない」状況を経験しているわけです。
だから権利がなくなったら怖いし失いたくないと必然的に考えます。
例えば
- 戦争経験者が語る平和への想い = 着るものも食べ物のないのが当たり前だった
- 投票に行こう!! と主張する人 = 選挙権はないのが当たり前だった
- 学校で真剣に勉強するアジアやアフリカの子供 = 教育を受けられないのが当たり前だった
という具合。
彼らは常に「勝ち取った権利がない状態には再び戻りたくない!!」と思っているわけです。
ところが反対には
- 平和ボケしてる平成生まれ = 着るものも食べるものあるのがデフォ、戦争状態や貧しいことを想像すらできない
- 投票に行かない若者 = 投票はできて当たり前、投票権を行使するかは自分が決めれば良い
- 学校をサボったり勉強しない学生 = 教育を受けられない状況が分からないし、別に受けたくて受けているわけじゃない
みたいな人もいて、こうした人は「権利はいつでもあるのだから行使するかは本人次第じゃん??」と思っているのもの事実だと思うんですよね。
認識が違うと困ること
例えば「権利はあって当然」という認識になって、贅沢になったり傲慢になってしまうとまずいですよね。
これは上述の平和ボケのパターンに当てはまることで、他にも「福利厚生は当たり前」とか「社員教育は当たり前」と思っている人は、トップや創業者からすれば「自分達はなくて苦労したのを頑張って変えたんだからありがたく思え!!」と思われている可能性があります。
あるいは権利を与えたつもりが、与えられた側は恩着せがましく思ってしまう場合がありますよね。
上述の勉強しない学生のように「勉強できるのはありがたいことなんだから学生の権利を行使しなさい!!」とお説教されると、「は? 別に頼んでないし、むしろ押し付けられてうざいわぁ」って思ってしまうとか。
同じ権利でも、獲得したか与えられたかという認識が違った結果、意見の対立や行動指針のズレが生じることになり、あまり好ましくありません。
権利を与えられた側が勝ち取った側と同じ認識を持つことは可能か?
ではこの「勝ち取った側」と「与えられ(てしまっ)た側」の認識をすり合わせることは可能なのでしょうか??
特に組織が大きくなり、創業者との世代間差が出る時など、この議論は避けては通れないものだと思います。
自分が友人と議論した範囲では「完全な認識のすり合わせは無理」という結論になりました。理由は
- 福利厚生が既にある状況で、あえてそれがない状況=無給で何ヶ月も働いてもらう等することは不可能、辞表出して権利が与えられる他の組織に移るだけ
- むしろ今を最底辺と思い、さらに良い状況にするために新しい権利を獲得していく方へ促すのが良い
というものでした。
まぁ権利の無い状況を経験できないってのは、特に大きいかもですよね。
マキャベリも
天国へ行くのにもっとも有効な方法は、地獄へ行く道を熟知することである。
と述べましたが、物事を知るためには必ずその反対側を経験する必要があるのでしょう、ジレンマです...
個人的にはこんな結論もありだと思っています。
誰かも言っていたけれど、メンバーを選べない集合に対して、自分の好きなものを布教するのって異常に困難なので、同好のメンバーを集めて集合を作るしかない気がする— Kuniwak@Lintオジサン (@orga_chem) July 4, 2016
つまり「勝ち取った権利だ!!」という認識を共有できる仲間(=同じ苦労を伴にした仲間だけ)と常に一緒にいるということです。
そうすればギャップを埋める必要すらなくなりますらかね。
でも「じゃぁ組織が大きくなったらどうするんだ!?」と言われれば、これは完全に逃げになりますけど...難しいですね。
この辺りに対する知見を、今後のマネジメントを通じて獲得していきたいと思いました。
追記
過去の伊藤直也氏のツイートが的を射ていて秀逸だった...
創業期のスタートアップはまじで人も金もない中、来週にはこのままだとキャッシュアウトして会社なくなりますよ? ってそういう状態で走るんですよ。そのリスクを背負って乗り越えた人たちが後続する人たちの道を作るんです。その道を作った人が後続した人たちよりも報われるのは当然だと思います— Naoya Ito (@naoya_ito) March 8, 2016