エンジニアが勉強するモチベーションを例に、ルールと制度と文化の違いを理解する
ふと最近「なんでエンジニアはそんなに勉強するんだろう?」という疑問について考えたことがありました。
というのも、ぼくは諸事情からSEやWeb エンジニア志望の大学生にプログラミングを教えることがあるのですが「エンジニアはプログラミングを勉強し続けるものだ!!」という(エンジニアの間では当たり前な)理論が社会人には通じても学生にはいまいちピンと来ないものだと気づいたからです。
これについては人によって答えがバラバラだと思いますが、だいたい3つに分かれるのではないでしょうか。
例えば「なぜプログラミングを勉強するのか」を学生にとっての例とともに示すと
- 義務やルールとして (例: 単位取得のため、入社までに必要)
- メリットがあるから (例: エンジニアになれば給与が良い、インターンや就活で有利)
- 興味や趣味で (例: アルゴリズムが好き、アプリを作りたい)
みたいな分け方が出来ると思います。
「すべき」「できる」「したい」の3軸フレームワーク
実はこれは、就活や研修でよく教えられる有名な思考フレームワークで、あることをする時のモチベーションを「すべき」「できる」「したい」の軸で考えるというものです。
この「すべき」「できる」「したい」こと3つが全て重なることを仕事にするのが最も良いと一般には言われていて、自分も改めてそうだなと感じたことがありました。
例えば
- 研究としてのプログラミングは別にそこまでやりたいわけではないけれど卒業するために必要だからやるのでなかなか進まない
- 趣味でやるプログラミングはやりたいからやっているけれど特に期限や質のボーダーはないので中途半端になってしまう
みたな感じで、どれかが欠けているとモチベーションは持続しないのかなと思いました。
前述の「エンジニアが勉強する理由」なら
- そもそも「勉強したい」という気持ちがないと、いくら義務であってサポート制度があっても利用するモチベーションすら起きない
- 「勉強できる」環境になければ(残業毎日終電まである等)、やはり物理的・金銭的に勉強することは難しい
- 「勉強しなくてもしてもどっちでも良い」のではよほど自分に厳しくない限りいつまでも完了しないし、いわばただの趣味になってしまう
というように、3つの要素ともマッチしていないと集中的かつ継続的な勉強というのは難しいと思うのです。
ルール・制度・文化は3つの軸のモチベーションを広げる要因
そこで外部要因として、この3つのモチベーションを広げるのが「ルール」「制度」「文化」だと思います。
ルールは「すべきこと」を規定するもので、普通自分ではなかなか決められません。
しかし外部で「朝礼で報告しなければいけない」「勉強しなければエンジニアとしての市場価値が下がる」というルールが設定されていれば、嫌でも勉強をやるモチベーションになります。
そこに「できること」を支援する制度が必要になります。
例えば新しい技術書を買うことを支援したり、勉強会やカンファレンスへの参加費を負担してくれるといったような制度は、勉強できるという行動の幅を広げることにつながります。またリモートワークを許可するというのも時間の使い方の自由度を上げ、結果的に勉強できる可能性を上げることになりますよね。
でも最後に「したいこと」として勉強を捉えなければ行動につながりません。
そこには文化というものが絡むと思っていて、例えば周囲が積極的に勉強していて自分もそれに釣られるとか、LT会やQiitaで成果を報告することでドヤ顔できたり笑い合えるという文化が「したい」のモチベーションを広げていくことになります。
そしてここで最初の疑問である「なぜエンジニアは勉強するのか?」の答えに戻ると、この3つのうちどれかを理由にしている人もいれば、全てを理由に勉強する人もいるというのが答えになるわけです。
ただ一つ言えるのは成長の早い人は3つ全てのモチベーションを持ち、さらにそれを広げられる環境にいるということでしょう。
途中の例にも出したように、全てが上手く揃っていないと、結局やらされ仕事になったり単なる趣味に終始したりという結果になるので好ましくありません。
はじめのうちはこの考え方がよくわからないと思いますが、自分は幸いな事にインターンや趣味のプロジェクトなど様々なきっかけでプログラミングをすることで、上記のことを理解できました。
3つ軸で考えれば誰かが何かをやらない本当の原因が分かる
ちなみにこの考え方は他のことでも同じだと思います。
特に個人的な経験では「制度」について誇張されがちな傾向があると感じています。
つまり「そもそもそうすべき/したいと思う人が本当にいるのか」という点が見落とされているということです。
「うちの大学に来ればこんなことが学べます」「我が社に入ればこんな事業ができます」
確かに「できる」は大事だが、本人にもそれだけの「やりたい」モチベーションは本当にあるの?
少子化を止めるには産休・育休や保育制度の拡充が必要
子供を儲けなければいけない・儲けたいと本当に思っている人達って多いの?? 自分のことの方が大事だったり結婚するの面倒と思っているだけなんじゃないの??
起業家を増やすには資金や施設などの補助が必要だ
そもそも起業をミッションとして生きている人や会社を興したいという意欲のある人自体が少ないのでは???
議論はあるとおもいますが 、産休育休制度を義務化したりベンチャー支援を充実させるのは、実は「できる」ようにしているだけで、当事者自身が「しなければいけない」「そうしたい」と思わなければ意味は無いでしょうね。
以上、モチベーションの源泉について思考を整理しました。
「メンバー全員を救いたい」という思考をする人はリーダーになるべきでない理由
資源が有限の中でチームメンバー全員は救えない
当たり前なんですけどね、最近改めて思ったもので。
どんな組織(会社、研究室、スポーツのチーム)でも
- 時間
- お金
- モノ
- 技術
など使える資源は有限ですよね。
そして多くの組織は、利益や研究成果などの結果を出さなければいけないないということは言うまでもないでしょう。
この『有限のリソースを使い結果を出す』という行為には、必ず『不要な資源を切り捨てる』という考え方がセットになるわけです。
つまり合理的に不要なものを切り捨てられない人がリーダーになると、組織は確実に死へ向かうことになります。
特に資源を『ヒト』に限って言うと「メンバー全員を救いたい」という人は基本的にリーダーになるべきではないということです。
リーダーも人間なので同じチームのメンバーに厳しく接することが辛いことはわかりますし、そうするとチームから嫌われてマネーじできなくなるのではないかと心配する気持ちだってあるはず。
自分にもチームメンバーみんなに好かれ、組織と足並みが揃わないメンバーも全員救える人が良いリーダーだと思っていた時がありました。
でも結局そういう方針のリーダー・組織は、やっぱり最後に結果を出せないんですよねぇ...
ぼくが経験した限りでも
- みんな楽しく仲良くやりたいと言ってできない方の人に合わせてレベルを下げるサークル
- 何度チャンスをあげて諭しても反省しない学生の尻ぬぐいに自分の時間を割いてまで付き合う指導教員
- 仕事をしない管理職を「これまで頑張ってくれたから」とクビにせず他の社員に負担を押し付ける社長
などなど...
リーダーにとって決断すべきことの一つは「組織に必要なメンバーを選ぶこと」であり、その決断ができない人がリーダーになれば、組織は確実に殺されるということです。
「メンバー全員を助けて仲良くなれるオレ、カッコイイ」とか女神様気取りのリーダーは、いつまでも組織のベースレベルを上げられず優秀な仲間に見限られ、気づいた時には大事なところにリソースが回せない状態になって全員共倒れ必至です。
成果を出したいリーダーが選ばなければいけないのは「仲間」であって「友達」ではないということを頭に叩き込まないといけないですね。
チームメンバーのトリアージ
トリアージとは、負傷者を重症度、緊急度などによって分類し、治療や搬送の優先順位を決めることであり、救助、応急処置、搬送、病院での治療の際に行う。 ※トリアージ(Triage)は、治療(Treatment)、搬送(Transport)とともに、災害時医療で最も重要な3つの要素(3T)の一つである。
トリアージの意義 - 横須賀市医師会
極端な話「この人は重症過ぎて助かる見込みがほぼないけど、代わりに他の軽症者10人を手当した方が助かる見込み高いよね」っていう感じで『優先度を付けて負傷者を助けよう!』という考え方がトリアージです。
ビジネスパーソンなら誰でも「優先度を付けて『タスクをこなす』」ことは実践していると思います。
しかしリーダーは「必要な結果に対して優先度を付けて『メンバーを選別』」しなければなりません、それも「合理的な理由にもとづいて」です。
もし結果が全く出ていないなら、「創業期から頑張ってくれているから」というのはメンバーを残す合理的理由にはなりません。
既に述べたとおり、有限なリソースで成果を出すのに不要なヒト・モノ・カネを削る必要性は必ず出てきます。
本気で成果を出したいなら、あれこれ考えてネガティブな気持ちになる前にさっさとトリアージする決断を下しましょう!!
優先度付けとしての評価はメンバーのためでもある
このCAでの評価制度のように、組織に向いていない人を洗い出すのは、実は本人のためでもあったりします。
なぜならたまたまその組織に向いていなかっただけで、別の環境なら十二分に成果を発揮できる可能性があるからです。
もしリーダーが決断せずにダラダラと成果にコミットできないメンバーをおいておけば、その分メンバーにとっても本来他の環境で出せたはずの成果を逃すことになるわけです。
メンバーを追い出すことをなにもネガティブに捉える必要はなく、むしろ「君にとって、もっと良い環境があるよ♪」とポジティブに考え話しをすれば、お互いハッピーになれること間違いなしだと思いますよ。